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【雑学コラム】万歳三唱の作法について

自衛隊式・万歳三唱の作法
〜「降伏」と「祝賀」を分ける掌の向き〜

自衛隊や警察、あるいは厳格な公務員の式典において、「万歳(バンザイ)」は頻繁に行われます。
しかし、彼らが行う万歳は、居酒屋の宴会で見られるような、両手をだらしなく広げるものとは一線を画します。

そこには、「手のひらを相手に見せるか否か」という、武人としての決定的な美学とルールの違いが存在します。

1. 最大の鉄則「手のひらを前に向けるな」

自衛隊における万歳で、最も厳しく指導される(あるいは先輩の背中を見て学ぶ)のが、手のひらの向きです。
ここには、軍事組織ならではの明確な理由があります。

○ 正しい万歳(自衛隊式)

【掌(てのひら)を内側に向ける】

両手のひらを、向かい合わせ(内側)にするようにして真上に突き上げます。
指先は揃え、剣を突き上げるような鋭いイメージです。

意味:天に向かって歓喜を突き上げる、士気の高揚。

× ダメな万歳(お手上げ)

【掌を相手(前方)に向ける】

手のひらを正面に向けて広げたり、指を開いたりする形。
これは絶対にしてはいけません。

意味:欧米における「Hands up(降伏・降参)」のポーズと同じに見えるため、実力組織としては禁忌とされます。

💡 「明治時代の太政官布告」説
明治時代に万歳の作法が定められた際、「掌を内側に」とされたという説が根強く残っています。公式な礼式令(ドリルマニュアル)には記載がありませんが、自衛隊や保守的な政治家の間では、この「内向きスタイル」が正統なマナーとして定着しています。

2. 美しい万歳のプロセス(動作要領)

だらだらと手を上げるのではなく、号令に合わせてキビキビと行うのが自衛隊流です。選挙の当選万歳などでも見られるスタイルです。

  1. 【姿勢を正す】
    まずは「気をつけ」の姿勢。かかとを揃え(自衛隊なら約60度に開く)、背筋を伸ばし、手は体側に。
  2. 【発声と共に挙上】
    音頭を取る人の「バンザーイ!」の発声に合わせて、一拍置いて唱和します。
    素早く両手を頭上へ。肘(ひじ)は曲げず、真っ直ぐ伸ばします。
    この時、手のひらは内側に向け、少し胸を張るようにして威風堂々と行います。
  3. 【素早く戻す】
    「イ」の発声が終わると同時に、素早く元の「気をつけ」の姿勢に戻します。
    手を上げたままダラダラしたり、下ろす時にブラブラさせたりしません。
  4. 【繰り返す】
    これを3回繰り返します(万歳三唱)。回数を重ねるごとに声が小さくならないよう、3回とも全力で発声します。

3. どのような場面で行われるのか?

自衛隊において、万歳三唱は日常茶飯事ではありません。以下のような「節目」に行われます。

壮行会・出征(派遣)

海外派遣(PKOや海賊対処)に向かう部隊を見送る際、滑走路や岸壁で、見送る側の隊員や家族が一斉に万歳三唱を行います。
「無事の帰還」と「任務完遂」を祈る、非常に厳粛かつ熱気のある瞬間です。

祝賀会・記念式典

駐屯地創立記念行事の祝賀会や、新年賀詞交歓会、あるいは個人の「定年退官祝賀会」などの締めくくりとして行われます。
ここでは、音頭を取る来賓(地元の名士やOB会長など)の所作が注目されます。

選挙の当選・昇任

元自衛官が政治家になり当選した場合や、幹部が高い階級(将官など)に昇任した際のお祝いでも見られます。
この時、本人は万歳をせず、万歳を受けて「答礼(お辞儀や敬礼)」をするのがマナーとされる場合もあります。

4. 足の運びにも「流派」がある?

さらにマニアックな作法として、万歳をする瞬間の「足」にもこだわりがあります。

  • 直立不動派:かかとをつけたまま、上半身だけで行う(現在の主流)。
  • 一歩踏み出し派:右足を半歩前に出しながら万歳をする。
    ※勢いをつけるため、あるいは「前へ進む」という意思表示として、古風な体育会系や応援団出身の幹部が行うことがあります。

まとめ:万歳は「気合」の表現形

自衛隊や公務員社会における万歳三唱は、単に嬉しいから叫ぶのではなく、「組織の団結」や「対象への敬意」を物理的に表現する身体言語です。

もしあなたが、自衛隊の祝賀会や、厳格な公務員の式典に参加する機会があれば、ぜひ「手のひらは内側、肘は伸ばす、動作はキビキビと」を意識してみてください。
それだけで、「お、この人は分かっているな」と、周囲から一目置かれること間違いありません。

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