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【遺族向け】自衛官が殉職したときの公的給付金

自衛官が「公務災害(殉職)」で死亡した場合の給付
~国の責任において支払われる特別な補償の解説~

訓練中の事故、災害派遣時の被災、その他任務遂行中の事故など、公務が原因で亡くなられた場合(公務災害認定)、ご遺族には病死の場合とは異なる非常に手厚い補償が適用されます。これは、国のために命を捧げた隊員とそのご家族に対する国の最大限の敬意と責任の表れです。

1. 賞恤金(しょうじゅつきん)

公務災害特有の給付であり、最も金額が大きい一時金です。危険な業務に従事した功労を称え、ご遺族を慰謝するために支払われます。

支給額の目安(最高ランク)

亡くなられた原因や状況の危険度に応じてランク付けされます。

  • 第1級(特別の功労): 6,000万円 ~ 9,000万円
    (例:災害派遣活動中の死亡、戦闘行動に伴う死亡など。法改正や特措法により変動あり)
  • 第2級(多大な功労): 3,000万円 ~ 5,000万円程度
    (例:危険を伴う訓練中の死亡など)
  • その他: 数百万円 ~ 2,000万円程度

※通常の退職金とは別に、上乗せで支給される「特別な弔慰金」です。

2. 公務員災害補償(年金と一時金)

労働災害(労災)の公務員版です。病死の場合の「遺族厚生年金」に代わり(または調整され)、より水準の高い補償が行われます。

① 遺族補償年金(メインの年金)

概要 亡くなられた隊員の平均給与(基礎額)をベースに、遺族の人数に応じて毎年支払われる終身年金です。
支給額目安 平均給与日額 × 153日分 ~ 245日分(年額)
(例:月給30万円の場合、配偶者+子1人で年額約250万円~300万円程度が目安)

② 遺族特別支給金(ボーナス的な一時金)

概要 公務災害認定された時点で、年金とは別に一括で支払われます。
支給額 一律 300万円

③ 遺族特別年金

上記の「遺族補償年金」に上乗せして支払われる年金です。ボーナス(期末・勤勉手当)を含めた年収をベースに算定されます。

3. 死亡退職手当(特別昇任による増額)

いわゆる退職金ですが、公務死亡の場合は「特別昇任(2階級特進など)」が行われることが一般的です。

  • 2階級特進の効果: 亡くなられた時点より2つ上の階級(例:2曹→曹長→3尉)の俸給月額で退職金が計算されます。
  • 整理退職扱いの支給率: 自己都合ではなく、組織都合の退職と同様の最高支給率が適用されます。

これにより、病死の場合に比べて数百万円~1,000万円近く退職金が増額されるケースがあります。

4. 【比較試算】公務災害時の受取総額イメージ

モデル:30代半ば・2曹・妻子あり(公務中の事故死)
※2階級特進で「3尉」扱いで計算されると仮定

給付の種類 概算金額
1. 賞恤金(危険業務レベル) 3,000万 ~ 6,000万円
2. 死亡退職手当(特進込) 1,500万 ~ 2,000万円
3. 遺族特別支給金 300万円
4. 埋葬料・弔慰金(共済等) 約 20万 ~ 50万円
【一時金 合計目安】 約 5,000万 ~ 8,000万円超


毎月の年金(遺族補償年金等)
年額 約250万 ~ 350万円
(病死時の遺族年金より高水準で安定します)

5. まとめ

自衛官が公務災害で亡くなられた場合、個人の生命保険(団体保険)を含めない公的補償だけで、一時金として数千万円~1億円近く、さらに手厚い年金が遺族に保障されます。

これは金銭で命の代わりにはなりませんが、残されたご家族が経済的に困窮することのないよう、国が最大限の制度を用意していることの証左です。

支給モデルケース

【試算表】自衛官の公務災害(殉職)時 公的給付
~国が責任を持って支払う特別補償額~

▼ 試算に使用したモデルケース ▼ 35歳 ・ 2等陸曹 ⇒ 3等陸尉(特別昇任)
家族構成:妻(専業主婦)・子1人(5歳)
※公務中の事故(訓練中など)を想定

1. 一時金(まとまって支払われるお金)

病死とは異なり、国からの「賞恤金」や災害補償の「特別支給金」が加算されるため、極めて高額になります。

項目 内容・計算根拠 概算支給額
賞恤金
(しょうじゅつきん)
公務災害特有の給付。
危険度に応じランク付けされる。
※一般的な訓練事故等の第2級~第1級を想定
3,000万 ~
6,000万円
死亡退職手当
(退職金)
2階級特進後の「3尉」俸給で計算。
支給率も最高ランクが適用されるため、病死時より大幅に増額。
約 1,800万円
遺族特別支給金
(災害補償)
公務災害認定時に一律で支給されるボーナス的な一時金。 300万円
共済組合給付
(埋葬料・弔慰金)
病死時と同様、組合からの見舞金など。
※自治体からの災害見舞金等が別途出る場合あり
約 20万円
一時金 合計目安 約 5,100万 ~
8,100万円超

2. 遺族補償年金(毎年支払われるお金)

「遺族厚生年金」の代わりに、より手厚い「公務員災害補償法」に基づく年金が支払われます。

項目 内容・計算根拠 年額(月額換算)
遺族補償年金
(公務災害補償)
平均給与日額 × 201日分(妻+子1人の場合)
※病死時の年金よりも計算ベースが高い
年 約 280万円~
(月 約 23万円)
遺族特別年金
(上乗せ分)
ボーナス(期末勤勉手当)算定基礎額 × 201日分
上記年金に上乗せして支給される
年金 合計目安 年 約 300万円前後
(月 約 25万円)

3. 【比較】病死 vs 公務死(殉職)

同じ階級・勤続年数でも、亡くなられた原因によってこれだけの差が生じます。

項目 病死の場合 公務災害(殉職)
一時金総額 約 1,000万円 約 5,000万 ~ 8,000万円
(賞恤金が大きく影響)
毎月の年金 月 約 14万円 月 約 25万円
(補償年金へ切り替え)

まとめ:受取総額のイメージ

35歳・公務災害モデルの場合

  • ① まとまったお金(一時金):
    5,000万 ~ 8,000万円
  • ② 毎月の生活費(年金):
    月 約 25万円
    (子供が18歳になるまで等の加算含む)

【さらに追加で】
ここに「団体生命保険(防生協)」の保険金(1,000万~3,000万円程度)が加算されるため、
実質の現金受取額は1億円前後になるケースも珍しくありません。

※本試算は2025年時点の制度に基づく概算モデルです。賞恤金の等級や特進の有無、家族構成により金額は大きく変動します。

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