01. 戦争の「質」が根本的に違う
ウクライナは「地続きの消耗戦」ですが、台湾有事は「海と空の超短期決戦」または「兵糧攻め(封鎖)」になります。
| 比較項目 | 🇺🇦 ウクライナ侵攻 | 🇹🇼 台湾有事(中国の狙い) |
|---|---|---|
| 地理条件 | 平原・陸続き (戦車で侵入可) |
海峡(幅130km以上) (世界最高難度の着上陸作戦) |
| 重要インフラ | 電力網・鉄道 | 海底ケーブル・港湾 (情報の完全遮断を優先) |
| 避難経路 | 陸路でポーランド等へ | 逃げ場なし(完全孤立) ※空港・港は最初に破壊される |
02. 日本への影響:もはや「国内有事」
「物価が上がる」レベルではありません。台湾の隣にある日本(特に南西諸島)は、物理的な戦域に含まれる可能性が極めて高いです。
日本の電力の約3割を生み出すLNG(液化天然ガス)は、備蓄がわずか2〜3週間分しかありません。
台湾海峡〜南シナ海が封鎖されると、タンカーが日本に来られなくなります。石油(備蓄200日分)と違い、ガスはすぐに尽きるため、開戦から数週間で「計画停電」レベルではないブラックアウト(大停電)が東京を含む全国で発生する恐れがあります。
中国軍が台湾の東側(太平洋側)を攻めるには、沖縄本島・宮古島・与那国島の間を通る必要があります。
自衛隊や米軍の介入を阻止するため、中国軍は日本の島々に展開するレーダーサイト、空港、対艦ミサイル部隊を先制攻撃する可能性が高いです。与那国島は台湾までわずか110kmであり、完全に戦闘エリアに入ります。
現在、台湾には約2万人以上の日本人がいます。ウクライナと違い、陸路で逃げられません。
有事になれば民間機は飛びません。自衛隊機を飛ばそうにも、空港が破壊されているか、中国軍の制空権下にあるため着陸困難です。「逃げたくても逃げられない」状況が現実味を帯びます。
中国は台湾周辺に大量の「機雷(海の地雷)」を散布する可能性があります。
これにより日本の商船は大幅な迂回を余儀なくされ、輸送コストが暴騰。食料自給率の低い日本は、スーパーから輸入品が消え、物価が数倍に跳ね上がる「戦時インフレ」に直面します。
03. どこを見れば分かる?(レッドライン)
ニュースで以下の言葉が出たら、すでに「有事」の入り口です。
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「Ro-Ro船(民間フェリー)」の徴用:
戦車やトラックを運べる民間の大型フェリーが、福建省(台湾の対岸)の軍港に大量に集められ、塗装を塗り替え始めたら、着上陸作戦の準備完了の合図です。 -
「検疫・臨検」の開始:
ミサイルを撃つ前に、中国海警局(沿岸警備隊)が台湾に向かう船を「違法薬物の検査」などの名目で片っ端から停船させ始めたら、事実上の「海上封鎖」開始です。 -
「海底ケーブル」の切断:
台湾と外部を結ぶネット回線が不自然に切断され、台湾からのSNS発信が途絶えたら、数時間以内の攻撃開始を意味します。
🇺🇸 アメリカ:介入の本気度は?
ウクライナに対してバイデン大統領は早々に「米兵は送らない(No boots on the ground)」と明言しましたが、台湾有事では全く異なる対応が予想されます。
中国軍による着上陸を阻止するため、空母打撃群(ロナルド・レーガン等)や原子力潜水艦を台湾周辺に展開させる可能性が高いです。「台湾関係法」に基づき、ウクライナとは比較にならないレベルの直接的な軍事支援(または戦闘参加)が行われます。
中国の主要銀行を国際決済網(SWIFT)から排除し、中国の海外資産を凍結します。ただし、米中経済は深く結びついているため、アメリカ自身も巨額の経済的損失(インフレ・株暴落)を被る「諸刃の剣」となります。
🇺🇳 国連:なぜ「役に立たない」のか
結論から言うと、国連安全保障理事会(安保理)は「完全に機能停止」します。
| 組織 | 予想される動き |
|---|---|
| 安全保障理事会 (実力行使を決める場) |
機能不全 当事者である中国が「常任理事国(拒否権持ち)」であるため、中国への非難決議や制裁決議は100%否決されます。ロシアも同調するため、安保理は何一つ決定できません。 |
| 国連総会 (多数決の場) |
声明のみ 「中国を非難する決議」は採択される可能性がありますが、これには法的拘束力がありません。中国は「内政干渉だ」と一蹴し、グローバルサウス(途上国)を金銭支援で抱き込み、票を割らせる工作を行います。 |
🇪🇺 🇬🇧 EU・NATO・その他の国々
「遠いアジアの戦争」に対して、欧州諸国は一枚岩ではありません。
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🇬🇧 イギリス・🇦🇺 オーストラリア(AUKUS)
米国と最も連携して動きます。オーストラリアは潜水艦や情報収集で支援し、イギリスも空母「クイーン・エリザベス」等をインド太平洋へ派遣し、牽制に参加する可能性があります。 -
🇪🇺 欧州連合(EU)
経済制裁には参加しますが、軍事介入には消極的です。特にドイツやフランスは中国市場への依存度が高いため、「制裁のレベル」を巡って米国と対立する恐れがあります。NATO(北大西洋条約機構)の集団的自衛権は「北大西洋」が対象エリアなので、自動参戦はありません。 -
🇰🇷 韓国
北朝鮮への警戒があるため、在韓米軍の抽出には反対しつつ、直接的な台湾支援には慎重(中国との関係悪化を懸念)な姿勢をとると予想されます。
🇯🇵 結論:日本はどうなる?
国連は止める力を持ちません。欧州は遠いです。
結局のところ、「アメリカが戦うと決めるか」、そしてその出撃拠点となる「日本(自衛隊・基地)が支えられるか」の2点に、台湾の命運(そして日本のシーレーンの命運)がかかっています。
国連軍のような多国籍軍の来援を期待する「ウクライナ・モデル」は通用せず、日米同盟が主役となる戦いになります。