自衛官の給料・手当・福利厚生について
自衛官の給料は、基本的に「階級」と「号俸(ごうほう)」の組み合わせで決まります。公務員特有の制度により、毎年安定して昇給する仕組みや、充実した各種手当について解説します。
1. 基本給の仕組み(階級・号俸)
自衛官の基本給は「階級」と「号俸」で決まります。
階級による昇任
- 自衛官候補生~〇士長: 定期的に昇任
- 3等〇曹: 昇任試験合格後に昇任
- 2等〇曹~准〇尉: 教育隊の成績や勤務実績により昇任
- 幹部(3尉以上): 選抜試験合格後、幹部課程修了で昇任
号俸による昇給(毎年1月1日)
勤務成績によって、毎年の基本給アップ額(号俸)が変わります。
| 勤務成績 | 号俸アップ数 | 備考 |
| 通常(3号) | 4号俸 | 一般的な評価 |
| 優秀(2号) | 6号俸 | 頑張りが評価された場合 |
| 特優(1号) | 8号俸 | 特に優秀な成績 |
ポイント
4号俸の差で月額基本給が数千円変わります。「公務員は給料が変わらない」と思われがちですが、部隊内での評価は給与に直結します。
2. 生活を支える手当(扶養・住居・通勤)
扶養手当(改正情報あり)
国家公務員の制度改正に伴い、子供に対する手当が増額され、配偶者手当は見直される傾向にあります。
| 対象 | 現在の支給月額 | 令和7年度(2025)以降の方向性 |
| 配偶者 | 3,000円 | 縮小・廃止の方向で検討中 |
| 子ども | 10,000円 | 13,000円へ増額予定 |
| 父母等 | 6,500円 | 現状維持 |
令和6年人事院勧告に基づき、2025年4月から子供手当が月額13,000円に引き上げられる予定です。
住居手当(家賃補助)
賃貸物件に住む場合に支給されます。
| 家賃額 | 手当支給額 |
| 16,000円以下 | 支給なし |
| 27,000円以下 | 家賃 - 16,000円 |
| 61,000円以下 | (家賃-27,000円)÷2 + 11,000円 |
| 61,000円超 | 28,000円(上限額) |
※単身赴任をして二重生活になる場合、単身赴任先の住居手当は上限14,000円(半額)となります。
通勤手当(詳細一覧)
駐屯地外から通勤する場合、距離に応じて支給されます。
支給条件
- 通勤のため自動車・バイク等を利用している
- 通勤のため電車・バスを利用している(運賃相当額)
- 通勤距離が片道2kmを超える
▼ 自動車等を利用した場合の支給額一覧(片道)
| 通勤距離 | 支給月額 |
| 5km未満 | 2,000円 |
| 5km以上 〜 10km未満 | 4,200円 |
| 10km以上 〜 15km未満 | 7,100円 |
| 15km以上 〜 20km未満 | 10,000円 |
| 20km以上 〜 25km未満 | 12,900円 |
| 25km以上 〜 30km未満 | 15,800円 |
| 30km以上 〜 35km未満 | 18,700円 |
| 35km以上 〜 40km未満 | 21,600円 |
| 40km以上 〜 45km未満 | 24,400円 |
| 45km以上 〜 50km未満 | 26,200円 |
| 50km以上 〜 55km未満 | 28,000円 |
| 55km以上 〜 60km未満 | 29,800円 |
| 60km以上 | 31,600円 |
3. 勤務環境・異動に関する手当
営外手当
結婚などで駐屯地の外(営外)に居住する隊員に一律支給されます。
- 支給額:月額 6,020円
単身赴任手当(詳細一覧)
人事異動により、やむを得ない事情で家族と別居し、単身で生活する場合に支給されます。
計算式
基本額(月30,000円) + 距離加算額
▼ 距離加算額一覧(自宅〜転属先)
| 距離区分 | 加算額 |
| 100km以上 〜 300km未満 | +8,000円 |
| 300km以上 〜 500km未満 | +16,000円 |
| 500km以上 〜 700km未満 | +24,000円 |
| 700km以上 〜 900km未満 | +32,000円 |
| 900km以上 〜 1,100km未満 | +40,000円 |
| 1,100km以上 〜 1,300km未満 | +46,000円 |
| 1,300km以上 〜 1,500km未満 | +52,000円 |
| 1,500km以上 〜 2,000km未満 | +58,000円 |
| 2,000km以上 〜 2,500km未満 | +64,000円 |
| 2,500km以上 | +70,000円 |
地域手当
物価が高い都市部などの駐屯地に勤務する場合、基本給に対して上乗せで支給されます。
| 級地 | 支給割合 | 都道府県、主要都市等 |
| 1級地 | 20% | 東京都特別区 |
| 2級地 | 16% | 東京都、つくば市、川崎市、大阪市等 |
| 3級地 | 12% | 神奈川県、大阪府、さいたま市、西宮市等 |
| 4級地 | 8% | 愛知県、京都府、仙台市、神戸市、福岡市等 |
| 5級地 | 4% | 埼玉県、兵庫県、福岡県、札幌市、前橋市等 |
広域異動手当
異動距離が60km以上の場合、異動後3年間にわたり支給されます。
- 60km以上 〜 300km未満:俸給等の5%
- 300km以上:俸給等の10%
4. ボーナス(期末手当・勤勉手当)
毎年6月30日と12月10日の年2回支給されます。
- 支給実績(年間):約4.60ヶ月分(令和6年度実績)
- 内訳: 期末手当(生活給的性格)+勤勉手当(成績評価)
目安
1回あたり「(月給+地域手当)× 約2.3ヶ月分」が支給されます。
勤勉手当は勤勉成績の判定(S or 特優等)により変動します。
5. 一時金・退職金
自衛官任用一時金
自衛官候補生から「2等陸士」に任官した際に支給されます。
- 支給額:221,000円
※早期退職時の返還義務
1年3ヶ月未満で退職した場合は、勤務期間に応じて以下の返還が必要です。
| 勤務期間 | 返還額 |
| 3ヶ月未満で退職 | 全額返還 |
| 3ヶ月以上 〜 7ヶ月未満 | 165,750円 |
| 7ヶ月以上 〜 11ヶ月未満 | 110,500円 |
| 11ヶ月以上 〜 1年3ヶ月未満 | 55,250円 |
退職手当(退職金)
勤務年数と階級に応じて支払われます。定年退職だけでなく、自己都合退職(任期満了含む)でも支給されます。
モデルケース
- 18歳入隊、定年(55歳前後)まで勤務し曹長で退職した場合、約2,000万円前後の支給が見込まれます。
- 18歳で防衛大学に入学し、定年(58歳前後)まで勤務し1佐で退職した場合、約2,800万円前後の支給が見込まれます
6. 年代別 平均年収モデル【大幅UP】
若年層の処遇改善(ベースアップ)により、初任給が大幅に引き上げられました(約13%増)。
初任給と10代の年収目安(令和6年度改定版)
| 区分 | 月額基本給 | 年収目安 |
| 2等〇士(高卒) | 224,600円 | 約380万円〜 |
| 2等〇士(大卒) | 239,600円 | 約400万円〜 |
| 一般幹部候補生 | 296,100円 | 約500万円〜 |
年代別 平均年収推移
| 年代 | 平均年収目安 | キャリアイメージ |
| 20代 | 400万円〜550万円 | ベースアップにより全体的に底上げ。陸曹昇任でさらに加速。 |
| 30代 | 500万円〜700万円 | 勤続10年超。結婚等の手当加算で年収増。 |
| 40代 | 600万円〜800万円 | 階級・号俸が上がり、基本給が充実してくる時期。 |
| 50代 | 700万円〜1000万円 | 定年間近。退職金や再就職を意識する時期。 |
勤務地は非常に大事になってきますね♪ご家族と相談することが最も重要ですね。