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自衛官の基本給を全世代引き上げへ

自衛官の給与引き上げを徹底解説

今国会(2025年11月)で、自衛官の新たな給与法改正案が審議されています。深刻な人材不足に対応するため、2024年度の若年層、2025年度の手当改善に続く「第3弾」の処遇改善として、今回は中堅・ベテラン層の離職防止を狙う「全世代」の基本給(俸給)引き上げが焦点です。さらに初任給も過去最高額へ再び増額する内容が盛り込まれており、防衛力の中核を担う人材確保へ、政府が全力を挙げる姿勢が鮮明になっています。

自衛官の深刻な人材不足に対応するため、政府は処遇の抜本的な改善に乗り出しています。特に給与面では、直近の2024年度(令和6年度)に遡って適用される大幅なベースアップと、2025年度(令和7年度)から本格化する「全世代」を対象とした処遇改善パッケージが決定・推進されています。

この記事では、自衛官の給与引き上げに関する最新の動向を、「直近の引き上げ」と「今後の全世代引き上げ」の2点に分けて詳しく解説します。

ポイント

2024年は若年層が中心でしたが、2025年は全世代を対象としたベースアップを検討されています。これにより若年層への入隊意欲高揚だけでなく、ベテラン層の離職を防ぐ狙いもあります。


【直近】2024年度(令和6年度)給与改定:若年層中心に大幅ベースアップ(遡及適用)

まず、直近の動きとして、2024年12月の国会で「防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律」が可決・成立しました。これは、人事院勧告に基づく一般職国家公務員の給与改定に準じつつ、自衛官の募集難の状況を踏まえた独自の加算を行ったものです。

最大のポイントは、令和6年4月1日に遡って適用されることです。

📈 主な改定内容(2024年度)

  • 目的: 深刻な人材確保難に対応するため、特に初任給や若年層(曹士クラス)の給与水準を民間企業の水準も考慮し、大幅に引き上げる。
  • 全世代への配慮: 若年層に重点を置きつつも、中堅・ベテラン層の士気維持のため、すべての号俸(全世代)の俸給月額(基本給)が引き上げられました
  • ボーナス(期末・勤勉手当): 一般の隊員で年間「4.60月分」(前年度比 +0.10月分)に引き上げられました。

💰 具体的な引き上げ例(月額)

区分改定前(月額)改定後(月額)増額幅
2士(高校新卒)198,800円224,600円+25,800円 (約13.0%増)
自衛官候補生157,100円179,000円+21,900円 (約13.9%増)
防衛大学校学生131,300円151,300円+20,000円 (約15.2%増)
高等工科学校生徒117,900円138,000円+20,100円 (約17.0%増)

(出典:防衛省関連資料)

この改定により、年収ベースでは以下の試算例が示されています。

  • 士長(20歳): 約55万円 の増額
  • 2曹(35歳): 約26万円 の増額
  • 2尉(40歳): 約17万円 の増額

このように、若年層ほど引き上げ率・額が大きくなっていますが、全世代の基本給が底上げされた点が特徴です。


【今後】2025年度(令和7年度)以降の抜本的処遇改善:「全世代」と「専門人材」への投資

2024年度のベースアップに加え、政府はさらに踏み込んだ処遇改善を計画しています。2024年10月に「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議」が設置され、2025年度予算案には処遇改善関連で約4,100億円という巨額の予算が計上されました。

このパッケージは、若年層だけでなく、専門技能を持つ中堅・ベテラン層(全世代)の離職を防ぎ、防衛力の中核を担う人材を確保・維持することを強く意識しています。

1. 30を超える「手当」の新設・増額(2025年度予算:167億円)

過酷な勤務環境や、民間で高額な報酬が提示される専門技能(サイバー、宇宙、航空など)に見合うよう、各種手当が大幅に強化されます。

  • 新設される手当(例):
    • 航空管制官手当
    • 航空機整備員手当
    • 主要な野外演習等に従事する隊員への手当
  • 増額される手当(例):
    • 航空手当(パイロットなど)
    • 災害派遣等手当
  • 支給対象の拡大(例):
    • サイバー専門部隊の隊員に「特殊作戦隊員手当」を準用

2. 若年層(任期制士)への更なる手厚い支援

2024年度の初任給引き上げに加え、2025年度からは制度そのものも見直されます

  • 「自衛官候補生」制度の廃止: 2025年度から、訓練期間中も「自衛官候補生」(身分は特別職国家公務員だが自衛官ではない)とする現行制度を廃止します
  • 「新たな任期制士」制度の創設: 入隊当初から正規の「自衛官(2士)」として採用します。
  • 初任給の統合・引き上げ: これにより、初任給は2024年度改定後の「2士」の給与である月額224,600円に実質的に統一・引き上げられます。
  • 「指定場所生活調整金(仮称)」の新設: 不慣れな営舎(寮)生活を送る任期制士に対し、6年間で総額120万円(月額換算16,700円程度)を給付する新たな給付金が創設されます。
  • 自衛官任用一時金(入隊時のボーナス)の引き上げ: 現行から約12万円増額し、約34万円となります。

3. 「全世代」の基本給(俸給表)の継続的な見直し

2024年度の改定は第一歩であり、今後は「任務や勤務環境の特殊性に見合う俸給表への改定」が継続的な課題となっています。政府の方針として、中堅・ベテラン層の離職を防ぐために「全ての年代の基本給を引き上げる」ことが明記されており、今後も昇給カーブの見直しなど、全世代の給与体系の改善が続くとみられます。


まとめ:給与と「働き方」の両輪で人材確保へ

今回の自衛官の給与引き上げは、過去に例のない規模とスピードで進められています。「直近」の2024年度改定では若年層を中心に全世代のベースアップを遡及適用し、「今後」の2025年度パッケージでは各種手当の増設や制度改革によって全世代・専門人材の処遇を抜本的に改善しようとしています。

また、2025年度予算では、給与(167億円)以上に、宿舎の抜本的な改修(冷暖房、Wi-Fi整備など)や生活・勤務環境の改善に3,878億円が計上されています

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