自衛隊コラム 配偶者・ご家族向け

自衛官の処遇改善(士の人材確保)

若年隊員に対する処遇改善が急務

陸、海、空のいずれの自衛隊も定員割れ(人材不足)が常態し、どこの部隊もカツカツです。

自衛隊は災害派遣等のイメージが強いですが、本来任務は「国防」であり、武器を持つことを許された組織です。現在、国際情勢は非常に緊迫しており、ウクライナ情勢を見てもやはり自国は自国民(=自衛隊)が守らなければならないと思います。

人材が集まれない理由としては、以下のことが考えられます。

人材不足となっている要因

  1. 国際情勢が不安定
  2. 給料等の待遇に対する不満
  3. 集団生活やパワハラ等に対する不安

国際情勢に関しては、ウクライナ情勢を見れば理解できます。

自衛官であれば戦地等に派遣される可能性はありますが、民間人であればその危険性はありません。もちろん、日本が本当に侵略されるようなことがあれば、国家存亡を賭けて民間人であっても戦闘することはあるかもしれませんが、近代史を見てもそれは稀であり、そうならないために外務省をはじめ国会議員は諸外国との友好関係を深めております。

自衛官になると死ぬ確率は上がる!?

ん~、こればかりは自衛隊がまだ戦争をしたことがないので分かりません。ただ、自衛官に限った話ではなく危険な職業は他にも沢山あります。しかしながら、国際情勢の緊迫が人材不足の要因の1つであるように自分の息子や娘さんが若くして命を落とす可能性がある自衛官になることを毛嫌いする気持ちも分かります。

国際情勢が緊迫することによる人材不足は解消できない!!

死ぬ確率が0ではない以上、これを理由とする人材流出、人材不足に解決策はありません。人の役に立つ仕事は、自衛隊だけなく警察や消防等、他にも沢山ありますので各人の意思を尊重せざるを得ません。

その一方で、給料面や生活面を理由とする人材不足は処遇を改善することで解消できます。

長年、自衛官の処遇改善と国会等でも言われ続け、そして今回改善されることとなりました。

若年隊員(士)に対する処遇が大幅に改善される

上図の通り、処遇が2点改善されます。

1.指定場所生活調整金

自衛官は指定場所に居住する義務があり、一昔前までは当たり前のように営内生活を送っておりましたが、現代の子供たちはそういった集団生活がストレスでストレスで我慢が出来ない。それだけで退職の理由にもなるといった話を聞きます。

それに対応するために入隊後6年間は毎年20万円が指定場所生活調整金として支給されます。総額で120万円にもなるので相当手厚いと思います。さらに金銭面だけの改善だけではなく、大部屋に十数人といった部屋を数名もしくは個室化していくという話も聞きます。

したがって、集団生活が苦であった人も①金銭面、②生活環境の2点が大幅に改善されます。こららの理由により入隊を敬遠していた人は、今回の処遇改善を契機に自衛隊への入隊を再検討してみてはいかがでしょうか?

2.自衛官任用一時金の引き上げ

こちらに関しては、自衛官候補生(=自衛官見習い)が自衛官(2士)に任官するときに、自衛官見習いの期間を自衛官として雇用していた場合の差額を自衛官任用一時金として支払っていますが、この一時金を最初から自衛官として採用される一般曹候補生と同じ年収になるように一時金の金額が大幅に引き上げられました

この改善によって、入隊当初は一般曹候補生と自衛官候補生で給料に差異はあるものの、自衛官として採用されればその差額がきっちりと支給されるので、年収ベースで考えれば差はなくなります。これにより、両方受けて一般曹候補生なら入隊したいけど、自衛官候補生は給料が少ないから入隊を辞退するか考えていた人には朗報です。入隊後でも試験を経て、一般曹候補生になることもできますし、応募条件さえ満たせば航空学生等を受験することも可能です。

まとめ

①年収が約70万上昇

金銭面での改善は、今回紹介した指定場所調整金(年20万円)に加えて、人事院勧告により年収ベースで約50万円ほど増額される計算なので、これまでよりも70万円ほど年収がアップします。短期間にこれほどまで大幅に改善されることは稀です。それだけ人材が不足しているのでしょうが、少工あがりの元自衛官としても羨ましい限りです。

②生活面でも個室化が進む

昔はタコ部屋で一部屋に4~12人ぐらいで生活していました。2段ベッドだと気を使うし、私もストレスだったと記憶しています。しかし、これからは徐々にではあるのでしょうが、個室化(大部屋をパーティションで仕切る等)していくようです。プライベート重視な若年層には、給与面よりもこちらの処遇改善の方が嬉しいのかもしれませんね。

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