昨今、自衛官の皆様の処遇改善(給与引き上げなど)が大きく報道されておりますが、これは、日々の崇高な任務に従事される自衛官の皆様に対し、国民がいかに深い信頼と期待を寄せているかの表れにほかならないと思います。
それゆえに、万が一、遅刻といった一見軽微に見える規律違反が発生した場合であっても、その背景にある国民の信頼に応えるため、組織として厳正な処分をもって対処することは、当然の責務であり、国民の理解を得る上でも不可欠なことであると考えられます。以下に、自衛官による遅刻などの処分事例をまとめました。現職の自衛官は当然ですが、これから入隊を志す人も肝に銘じておきましょう。
I. 「遅刻(寝坊など)」による処分事例
数時間程度の遅刻であっても、理由や状況によっては「減給」や「戒告」といった懲戒処分が科されます。
事例1:漫画喫茶で寝坊、幹部が約4時間遅刻
- 報道時期: 2025年7月
- 所属・階級: 陸上自衛隊 朝霞駐屯地・1等陸佐(幹部)
- 違反内容: 正規の出勤時刻(午前8時半)に登庁せず、部隊からの電話連絡にも応答しない状態でした。約4時間後の午後0時半ごろに出勤しました。
- 理由: 「前日に私用で外出し、漫画喫茶で休憩していたところ、寝過ごしてしまった」ため。
- 処分内容: 減給 1/30(1ヶ月)
- 詳細: 1等陸佐という管理職(大隊長や課長クラス)の幹部自衛官が、寝坊で無断遅刻したという点で重く見られた事例です。
事例2:寝坊で護衛艦の「出港」に間に合わず
- 報道時期: 2022年5月
- 所属・階級: 海上自衛隊 佐世保基地(護衛艦所属)・30代 海士
- 違反内容: 担当する護衛艦の出港時刻までに乗艦せず、遅刻しました。
- 理由: 「寝過ごした」ため。
- 処分内容: 減給 1/15(1ヶ月)
- 詳細: 通常の事務作業の遅刻と異なり、艦艇の運用という「実任務」に直接的な影響を与えた(艦は定刻通り隊員を乗せずに出港した)ため、通常の遅刻より重い減給処分となっています。
事例3:飲酒後に寝坊し、約8時間遅刻
- 報道時期: 2023年10月
- 所属・階級: 陸上自衛隊 高遊原分屯地・30代 3等陸曹
- 違反内容: 正規の出勤時刻から約8時間遅刻しました。
- 理由: 「私的な飲酒後に寝過ごした」ため。
- 処分内容: 減給 1/30(1ヶ月)
事例4:約19時間の遅刻
- 報道時期: 2024年1月
- 所属・階級: 陸上自衛隊 姫路駐屯地・男性隊員
- 違反内容: 詳細な理由は不明ですが、約19時間にわたり遅刻しました(ほぼ1日の無断欠勤に近い)。
- 処分内容: 減給(期間不明、報道では「減給処分」とのみ)
II. 「無断欠勤」による処分事例
無断欠勤は「遅刻」とは一線を画し、1日でも「停職」処分となる可能性があります。日数が長引けば「懲戒免職」が現実的になります。
《 A:停職処分となった事例 》
事例5:幹部自衛官が8日間の無断欠勤
- 報道時期: 2024年7月
- 所属・階級: 陸上自衛隊 飯塚駐屯地・2等陸尉(幹部)
- 違反内容: 8日間にわたり、正当な理由なく無断で欠勤しました。
- 理由: 詳細は非公表ですが、幹部自衛官による無断欠勤として重く受け止められました。
- 処分内容: 停職 9日
事例6:「職場環境に不満」 12日間の無断欠勤
- 報道時期: 2023年9月
- 所属・階級: 航空自衛隊 春日基地・空士長
- 違反内容: 12日間にわたり無断欠勤しました。
- 理由: 「職場環境に不満があった」ためと説明しています。
- 処分内容: 停職 12日
事例7:無断欠勤1日と「常習的な遅刻」
- 報道時期: 2023年11月
- 所属・階級: 陸上自衛隊 今津駐屯地・20代 陸士長
- 違反内容: 無断欠勤1日に加え、約5ヶ月間で**計23回の遅刻(うち15回は無断遅刻)**を繰り返しました。
- 理由: 詳細は非公表。
- 処分内容: 停職 4日
- 詳細: 無断欠勤が1日でも、常習的な規律違反(遅刻)が加わったことで、停職処分となっています。
事例8:「パニックになり」1日半の無断欠勤
- 報道時期: 2023年3月
- 所属・階級: 陸上自衛隊 伊丹駐屯地・3等陸曹
- 違反内容: 1日半にわたり無断欠勤しました。
- 理由: 「私用の手続きを忘れていたことを思い出し、パニックになった」ため。
- 処分内容: 停職 2日
《 B:懲戒免職(クビ)となった事例 》
無断欠勤が長期化(目安として20日以上)すると、職場復帰の意思なしとみなされ、最も重い懲戒免職となるケースがほとんどです。
事例9:「上司の指導に不満」 100日間の無断欠勤
- 報道時期: 2022年7月
- 所属・階級: 陸上自衛隊 豊川駐屯地・20代 陸士長
- 違反内容: 合計100日間にわたり無断欠勤を続けました。
- 理由: 「職場での指導に不満を持った」ため。
- 処分内容: 懲戒免職
事例10:「上司の指導方法に不満」 34日間の無断欠勤
- 報道時期: 2024年4月
- 所属・階級: 陸上自衛隊 都城駐屯地・20代 陸士長
- 違反内容: 34日間の無断欠勤。
- 理由: 「上司の指導方法に不満があった」ため。
- 処分内容: 懲戒免職
事例11:「指導に納得いかず」 30日間の無断欠勤
- 報道時期: 2023年10月
- 所属・階級: 陸上自衛隊 福知山駐屯地・20代 陸士長
- 違反内容: 30日間の無断欠勤。
- 理由: 「上司からの指導に納得がいかなかった」ため。
- 処分内容: 懲戒免職
事例12:「上司の指導がきつい」 21日間の無断欠勤
- 報道時期: 2023年12月
- 所属・階級: 海上自衛隊 舞鶴基地・20代 海士長
- 違反内容: 21日間の無断欠勤。
- 理由: 「上司の指導がきついと感じた」ため。
- 処分内容: 懲戒免職
まとめ
- 遅刻: 寝坊などの単純な遅刻は「戒告」や「減給」が多いですが、幹部であったり、任務(出港など)に支障をきたしたりした場合は処分が重くなります。
- 無断欠勤(短期): 1日〜10数日程度でも「停職」処分が科されます。常習的な遅刻と組み合わさると、より重く判断されます。
- 無断欠勤(長期): 20日を超えてくると、理由が何であれ「懲戒免職」となる可能性が極めて高くなります。